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最高裁判所第三小法廷 昭和45年(オ)980号 判決 1971年2月23日

上告人

西日本設備工業株式会社破産管財人

馬渕分也

被上告人

三陶研究所こと

加藤栄

代理人

田中節治

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点について。

本件三通の約束手形は、いずれも破産会社代表者富岡市郎の依頼を受けて、被上告人が破産会社の運転資金を融通する目的で振り出したものであり、なんら被上告人と破産会社との間に対価関係があつて振り出されたものではなく、被上告人は、このことをもつて、破産宣告後破産会社から右約束手形を受け取り所持している破産管財人である上告人に対しても対抗することができるものと解すべきである旨の原審の認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠関係に照らして首肯できる。原判決に所論の違法はなく論旨は採用できない。

同第二点、第三点および第三点追加について。

原判決の記載によれば、被上告人は、先ず融通手形の抗弁を提出し、予備的に相殺の抗弁を提出したものであり、そして、この記載は、本件記録によれば、被上告人の第一、二審でなした主張に符合するものであることが明らかである。所論は、相殺の抗弁の主張により融通手形の抗弁の主張は撒回されたことを前提とするものであるが、このことの認められないことは前記のとおりである。したがつて、原判決に所論の違法のないことは明らかであり、論旨はいずれも採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(飯村義美 田中二郎下村三郎 松本正雄 関根小郷)

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